骨盤臓器脱の症状は、骨盤まわりの軽い圧迫感から、実際に臓器が体の外へ突出して見える状態まで幅があります。多くの人では、重い物を持たないなど日常の注意で経過観察とする場合もあります。治療が必要な場合でも、理学療法から外来で行われる手術まで、選択肢があるとされています。この記事では、米国で泌尿器科医・ウロギネコロジー専門医として骨盤臓器脱を診療するジャナ・トンプソン医師の見解を紹介します(出典:NAFCのポッドキャスト「Life Without Leaks」)。
このエピソードは(英語)Apple Podcasts、iHeart Radio、Spotifyなどで聴取できます。米国では、本ポッドキャストは企業スポンサーの支援を受けており、膀胱・腸のコントロールに用いられる仙骨神経刺激療法などへの言及があります。
骨盤臓器脱とは
トンプソン医師によると、骨盤臓器脱は「膀胱瘤(cystocele)」「直腸瘤(rectocele)」「子宮脱」などの名前で呼ばれることがあり、米国では300万人を超える女性に影響があるとされています。骨盤底の筋肉や靱帯の支持が弱くなることで、膣壁が下がり、突出・脱出してくる状態です。
医師は「膣は靴下のような筒状で、つま先側が内側から押し出されて裏返るイメージ」と説明します。膀胱や直腸は膣の上下に位置するため、治療の焦点は「膣壁を本来の位置に支えること」であり、膀胱や腸そのものを縫いつけるのではなく、膣を支えることで周囲臓器の位置関係も整うとされています。
起こりやすい背景(米国での臨床現場から)
- 加齢(とくに閉経後)はリスクとされています。
- 妊娠・出産後に一過性に起こることがあり、慢性化して受診に至る例もあります。
- 骨盤の手術歴や腫瘍などが関与することがあります。
- 日常的な強い腹圧(慢性便秘、慢性の咳、重い荷物の反復的な持ち上げなど)が症状出現のきっかけになることがあります。
みられやすい症状
- 骨盤の圧迫感、膣のふくらみ感
- 「膣や脚の間から何かの組織に触れる」独特の感覚
- 排尿・排便時に、膣や肛門付近を手で支えると出しやすい(と感じる)ことがある
圧迫感だけでも起こり得ますが、触れる組織の感覚は骨盤臓器脱に比較的特徴的だと医師は述べています。
からだの理解と情報ギャップ(米国での課題)
医師は「女性が自身の骨盤解剖を学ぶ機会はまだ十分ではない」と指摘します。救急受診するほど驚いて受診する人もおり、多くはかかりつけ医で病名が伝えられてから専門医に紹介されるとのことです。診療では「まず自分のからだで何が起きているかを図解しながら共有する」ことを重視していると言います。
また米国では、言語や文化的背景の異なるコミュニティ(例:スペイン語話者、アフリカ系アメリカ人など)への情報提供とアクセスが十分でない現状も話題になりました。地域のヘルスフェアや身近な場での啓発の重要性が挙げられています。
まず何をすればよいか
- 可靠性の高い情報で学ぶ:医師は、まず症状が「有害なものではないか」を知りたいと来院する人が多いと述べます。米国では、大学病院や医療機関のサイト(例:Mayo Clinic、University of Michigan など英語)にも解説が掲載されています。
- かかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらう方法もあります。
診断後の選択肢(一般的に言われていること)
医師は「治療を“しない”という選択もあり得る」点をまず伝えるといいます。医学的に緊急の対応が必要となるケースは稀とされ、どの程度困っているか(生活の中で何が制限されているか)を一緒に確認した上で方針を検討します。選択肢としては次のようなものが挙げられました。
- 骨盤底に特化した理学療法
- 骨盤底の専門的トレーニングを行う理学療法士によるプログラムがあり、一般的な「骨盤底筋体操(いわゆるケーゲル)」のみではない介入が行われることがあります。
- ペッサリー(膣内支持器具)
- 個々に合わせてサイズを合わせるシリコーン製の挿入デバイスで、膣内で膨らみを持ち上げて支える道具として用いられることがあります。
- 手術
- 現在(米国では)、外来手術として行われる方法が主流と説明されています。術後はおおむね6〜8週間の活動制限が推奨され、4週間程度で性交渉を再開する目安が示されることもあるといいます。日常的に約23kg(50ポンド)以上を持ち上げる仕事などは、再発リスクに配慮して個別に相談が必要と医師は助言しています。
- 術後は強度な制限を生涯続ける必要はないとの見解も示されましたが、具体的な可否は術式や個人差によります。
手術への不安と医師の見解
手術に慎重な人も少なくありません。医師は、まず保存的な方法(理学療法やペッサリーなど)を試すことには十分な意味があり、たとえ症状がすべてなくならなくても、からだの理解や術後のセルフケアにつながる土台づくりとして役立つと述べています。
まとめ
骨盤臓器脱は、症状や生活への影響の程度が人によって異なります。情報を得て自身の目標(何をできるようになりたいか)を明確にし、医療者と相談しながら納得できる選択肢を検討することが大切です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関に相談してください。
参考リソース(英語)
- Dr. Thompson’s Practice
- The National Association for Continence(NAFC)