医師への相談

経腟メッシュ、話しにくいテーマを話しやすく――ほかにも大切なこと。Cary Fishburne医師に聞く

2022-09-20

米国NAFC(National Association for Continence)のポッドキャスト「Life Without Leaks」での対談をもとに、日本の一般読者向けに内容を整理・翻訳しました。個人差の大きいテーマですので、あくまで情報提供としてお読みください。気になる症状がある場合は、受診先でご相談ください。

概要

米国で女性骨盤医学・再建外科を専門とするCary Fishburne医師は、尿失禁や骨盤底機能障害に悩む方に関わる幅広い話題について見解を語りました。経腟メッシュ(transvaginal mesh)の現状(米国)、抗菌薬耐性の問題、プライベートな症状を医療者と話しやすくする工夫、そして「いつからでも相談は遅くない」というメッセージなどです。20年間「何もできない」と言われ続けた104歳の患者さんの経験談も紹介されました。

なお、米国と日本では制度・承認状況が異なります。本文の規制・承認に関する記述は米国での状況です。

リソース(英語/NAFCサイト)

  • Overactive Bladder Resource Center(過活動膀胱の基礎情報)
  • Bladder Diary(排尿日誌のひな形)
  • Talking To Your Doctor(受診時の伝え方のポイント)

フィッシュバーン医師が診ている疾患の幅

女性の排尿・排便・骨盤痛など、骨盤底機能に関わる不調全般を対象とするとのことです。

  • 尿失禁・便失禁、排尿困難や排便困難
  • 骨盤臓器脱
  • 慢性骨盤痛や性交痛
  • 再発性膀胱炎、血尿などの複雑な内科的・外科的対応を要するケース

基礎に神経疾患(多発性硬化症やパーキンソン病など)がある方もおり、一人ひとりに合わせた評価と対応が重視されるといいます。

受診のきっかけと「よくある誤解」

「年をとれば誰でも我慢するもの」と考えて、長年ひとりで抱え込む方が少なくないそうです。フィッシュバーン医師は、これらの不調は生活の質に大きく影響しうるため、まずは情報を得ることが大切だと語ります。外来では、侵襲の小さい選択肢(内服、外来での簡便な処置など)を含め、患者さんの目標に合わせて段階的に検討していくといいます。

介護者・家族とのコミュニケーション

家族や介護者が同席して相談に来るケースも多いとのこと。全身状態や生活背景に合わせ、できるだけ負担の少ない方法でケアする道が模索されます。104歳の方が「何かできることは?」と相談に来られ、本人の希望と安全性に配慮した方針で生活の質の向上につながった、という米国での経験談が紹介されました(個別例であり、同様の結果を示すものではありません)。

話しにくさのハードルを下げるには

まずは「ここで話してよい」空気を医療側が作ることを大切にしているそうです。率直な質問で対話を進め、症状が日常に与える影響と、患者さん自身の目標を把握します。診察(身体所見)と組み合わせることで、現実的な選択肢が見えやすくなるといいます。

期待値のすり合わせ

「常に完璧」を目指すのではなく、「より良くする」ことを現実的な到達点として共有することが、結果として満足度につながることがあると述べています。段階を踏み、優先度の高い問題から取り組む「層をはがす(オニオンのように)」アプローチになる場合もあるそうです。

受診前にできる準備

  • 症状の出方、悪化・軽減する条件、生活への影響を整理しておく
  • これまで試した方法と、その時どう感じたか(良かった点・合わなかった点)をまとめる

こうした情報が、診断と話し合いに役立つとされています。NAFCの排尿日誌(英語)も参考になります。

現在の標準的な選択肢と課題(米国の現場より)

選択肢の「道具箱」は広がっており、多くの人に合う方策が提案できることが増えているといいます。一方で、再発性膀胱炎では細菌の抗菌薬耐性が課題となっており、再発予防・治療の工夫が求められているとのことです。

経腟メッシュ(transvaginal mesh)をめぐる米国での状況

経腟メッシュは、再発を抑える目的で普及が進みましたが、製品の設計・手技・教育体制が十分に成熟する前に使用が広がり、副作用への懸念が高まりました。米国では数年前、FDA(食品医薬品局)が「短期的な有益性が従来法に十分勝ると示されない」として、経腟メッシュの市販キットを市場から撤回させました(米国での措置)。

その後、同じ研究の3~5年の追跡では「従来修復より成績が良好と示唆する」報告も出てきていると医師は述べていますが、社会的印象は厳しく、米国内で産業界が再投入に踏み切るかは不透明とされています。現在、フィッシュバーン医師の施設では、経腟メッシュの新規使用は極めてまれで、慎重な説明と合意のうえで個別に検討されるという位置づけとのことです(米国での適応外使用に関する話であり、日本の状況とは異なります)。

ここで言及される経腟メッシュと、以下は区別されます(米国FDAの見解)。

  • 尿失禁に用いるメッシュスリング
  • 腹腔内でメッシュを用いる仙骨膣固定術(サクロコルポペクシー)

これらは米国では広く行われており、前者の規制対象になった「経腟メッシュの市販キット」とは異なるものとされています。日本での承認・適応・実施体制は異なります。具体的な可否は受診先でご確認ください。

神経調節療法など「上位治療」への認知(米国)

過活動膀胱、尿閉、便失禁に対して、神経調節療法(例:仙骨神経刺激、経皮的脛骨神経刺激[PTNS]など)が選択肢となる場合があります。フィッシュバーン医師は、患者さんだけでなく医療者側でも、これら上位治療への認知はまだ十分でない印象があると述べ、情報提供の重要性を強調しています(いずれも米国での所感)。日本での適応や実施体制は医療機関にお尋ねください。

まずは相談を

骨盤底の不調はプライベートな問題ですが、生活の質に深く関わります。相談したからといって、その場で治療を決める必要はありません。自分の状態を知り、選択肢を理解する第一歩として、受診や相談の機会を持つことが勧められています。気になる症状は、まず医療機関にご相談ください。

Source

本記事はNAFC(米国全国失禁協会)の記事を翻訳し、日本の読者向けに再構成したものです。

原題:Transvaginal Mesh, Making Uncomfortable Topics Comfortable And Much More - A Conversation With Dr. Cary Fishburne
https://nafc.org/bhealth-blog/007-transvaginal-mesh-making-uncomfortable-topics-comfortable-and-much-more-a-conversation-with-dr-cary-fishburne/

Medical notice

本ページは一般的な情報提供を目的としています。特定の効果を保証したり、診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。

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